2010年5月の保育
−海へ向かっていく小川のように−
もうすぐ5月の連休だというのに、いつまでも寒い日があったりして、お弁当を持って、さあピクニックに行こうという気分にはなりにくいですね。それでも、新緑が萌える季節、長い散歩にでも出かけたくなります。
私のふるさとスペインから送られてきた写真を眺めていました。滝と川が写る景色を見ているうちに、ある歌を思い出していました。「水はつかめません、水はすくうのです・・・」、何というタイトルだったか、その先の歌詞も忘れてしまいましたが、水と人の心を重ね合わせて、「水(心)はつかめません、すくうものです」と歌うものでした。
同時に、それは子どもたちもそうだなと思いました。子どもたちの体も心も、存在自体が柔らかく、自由自在。止まることを知らず、さらさらと海へ向かって流れていきます。でも、それは堤防で仕切られた大きな川の流れではなくて、小川のよう。草むらへ、藪の中へ、ちょろちょろと流れがそれてみたり、またもとの流れへ戻ってみたり。いずれは大きな海へ流れていくのでしょうけれど、自分が今どこを流れているのかわからない。
広い海が、彼らがやがて乗り出す人生だとしたら、そこへ至るまでにたくさんの道草と、たくさんの寄り道、大きな岩にぶつかり、さまよい、さまざまに形を変えていきます。柔らかいから、どんな形にでもなる。柔らかいから、私たちがそっと手を添えることもできる。
ゆっくりと、その流れを見守りながら、あまりはずれてしまわないように小石を置いて流れを戻してあげたり、手を添えてあげることが、私たち大人の役目かもしれません。ぎゅっとつかむことはできません。すくいながら、手を添えながら、流れを止めるのではなく、海に向かっていけるように。
子どもたちの命、子どもたちの心はいつも前を向いています。私たち大人は、彼らが壁にぶつかるたびに、また流れを戻せるように、流れを止めないように、新しい力を得て前へ進んでいけるように、いつもそばで見守りながら、そっと手を添えていたいと思います。