2008年3月の保育
−園を巣立っていく子どもたちに−
2月23日、子どもたちの音楽発表会がカテドラルで開かれました。年少から年中、まもなく卒園していく年長の子どもたちの奏でる音楽がご聖堂に響きました。それはすばらしい時間だったと思います。
ご聖堂には、ご聖櫃という主イエズス・キリストの御体がおいでになる場所があります。そこで、イエズスさまは祈りを捧げる人を迎えてくださいます。その聖さを守るために、ご聖堂で催し物があるときは、イエズスさまに別の場所にお移りいただくほうがいいのかもしれません。けれども、音楽発表会の日、私はあえてイエズスさまに、その場所にとどまっていただきました。子どもたちの歌声、子どもたちの奏でる音楽を私たちとともに聞いていただきたかったからです。インマヌエル・ともにいてくださる神であるイエズスさまは、きっと喜んでくださったと思います。
聖書に描かれているイエズスさまの最初の奇跡は、「カナの婚礼」というものです。友人の婚礼に招かれたイエズスさまは、宴たけなわで、ぶどう酒が足りなくなったことで友人が恥を感じないようにと、水がめにためてあった水をぶどう酒になさいました。ただの水が、人を酔わせるぶどう酒に変わったという奇跡です。
子どもたちの奏でる音楽は、専門家にとっては平凡な、どこにでもある子どもたちの音楽でしょう。けれども、そこに集まって耳を傾けるご家族の方たち、園の先生たち、そして園長の私にとって、それは「どこにでもある音楽」ではなくて、ただの水ではなくて、心を酔わせるぶどう酒になります。それは、子どもたちの懸命さだけではなく、そこにご聖櫃のイエズスさまがいてくださったから、そして、耳を傾けるご父兄の愛情によって、カナの婚礼で水がぶどう酒に変わったように、子どもたちの音楽が私たちを酔わせる音楽になったと思います。
カナの婚礼という奇跡を通して、イエズスさまは結婚というものを祝福されました。人が結婚を通して成長し、子どもをもうけ家族になってゆく。そして、その愛から生まれた子どもたちは家族の愛の中で育っていきます。人が人として生きていく、一番大切な、根本的なところにイエズスさまの祝福があるのです。
園を巣立っていく子どもたちは、幼稚園という小さな世界から少しずつ大きな世界に羽ばたいていきます。けれども、彼らを支えるのは家族の愛であり、この庭で注がれた神さまの愛なのだと思います。彼らの人生の中で、この幼稚園で過ごした時間が神の祝福であることを彼ら自身がいつか発見してくれることを私は願っています。
卒園おめでとうございます。一人一人が神さまのまなざしの中で愛にあふれ、育っていくことをいつも祈っています。